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《コラム》必ずしも脱税とは言えない「所得隠し、海外への所得移転」
◆読者を誤解に導く記事の定型文
新聞紙上を賑わせる
「〇〇国税局は、△△会社の税務調査で、
国内で計上すべき所得を海外子会社へ移転したとして、
移転価格税制に基づき20××年×月期までの×年間に
計約□□億円の申告漏れを指摘していたことが分かった」
といった報道は、読者に△△が脱税会社という印象を与える
典型的なミスリーディング記事です。
理由は、この時点の事実として、脱税というよりも、
税務調査での当局の見解が、
課税の元となる所得(=儲け)がどちらの国に属するかにつき
会社側と相違しているだけだからです。
すなわち、△△社は、利益は海外子会社のものと認識し、
一方の国税は日本の親会社のものとして、認識が違うだけなのです。
◆移転価格税制とは
企業が海外の関連企業との取引価格(移転価格)
を通常の価格と異なる金額に設定すれば、
一方の利益を他方に移転することが可能となります。
移転価格税制は、このような海外の関連企業との間の
取引を通じた所得の海外移転を防止するため
、海外の関連企業との取引が、
通常の取引価格(独立企業間価格=第三者取引価格)で
行われたものとみなして所得を計算し、課税する制度です。
わが国の独立企業間価格の算定方法は、
OECD移転価格ガイドラインにおいて国際的に認められた
いくつかの方法に沿ったものとなっています。
納税者と国税が対立した時は、
異議申立による再調査→審査請求(もしくは直接審査請求)
→裁判と進んでゆきます。
または他国との相互協議を経る場合もあります。
◆武田薬品工業へ大阪国税局の再挑戦
2017年7月21日の日本経済新聞の朝刊で、
大阪国税局が武田薬品工業に5年間で
約71億円の申告漏れを指摘したという報道がされました。
過去2006年に同じような申告漏れが指摘されましたが、
結局、この課税漏れは取り消されています。
移転価格の算定方法も、2011年(平成23年)に、
ベストメソッドルール(=その会社にとって最適な方法で価格を算定すること)に
変わっています。その影響か、それ以外の要因もあったのかは不明ですが、
大阪国税局は再挑戦してきました。
移転価格税制は、基本的には、国と国との税金の分捕り合いです。
税収がマイナスとなり国税も必死になっているのでしょう。
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